とおく広がる、砂と骸の地。夢にえがいた藍玉色の希望も今はなく、ただ滅びゆくみちを辿るさびしさが、そこに在るのみに思えた。

吹き荒ぶ砂塵が、ざらりと少年の頬を撫ぜる。砂よけの外套がはためき、きんいろの髪の光が散った。それは、ほとんどが雲に覆われた空からわずかに差す陽を、とらえるようだった。砂の大地に垣間見える、見上げるほどの大きさをした大竜の骨は、乾いた白色をしており、風にさらされところどころが欠け落ちている。少年はそれをくぐりゆくと、何かをさがして数度、あたりを見回す。やがて目当てのものを見つけると、そちらに歩み、砂の中へもぐりこむように姿を消した。

角と蹄を持ち山羊に似ていて、また小柄な獣人族、フーフ。かれらが住処をもとめたどり着いた地下遺跡には、湧き水や植物、それが生育するために要するひかりをあつめる構造と、養分のある土……、そういった生命の糸が、かすかにつながれていた。その入り口から響く足音に、フーフの少年は耳をすませる。やがて見知った顔がのぞき、彼がやあ、と軽く手をふると、フーフの少年は再会のよろこびを顔いっぱいに浮かべた。

「ランスレット!久しぶり、元気にしていた?」

「久しぶり、ポルカ。うん、僕は大事ないよ」

フーフの少年・ポルカは、手元にあったちいさな壺を、固めた土でつくられた棚へしまう。金髪の人間の少年・ランスレットがそれを見て、なにをしていたの?とたずねると、ポルカは「薬草の仕分けをね」と答えた。ランスレットはさまざまな薬草が植えられた菜園の前へしゃがみ、顎を指でさする。やわらかく照らすひかり、清らかな水の音、豊かな土と若い芽の息吹。深く息を吸い、それらを身体に感じながら彼はつぶやく。――ほんとうにここは、生命の隠れ家だね。

「みんな、歓迎してくれるかな?」

「もちろん。ばあやに知らせたら、きっと宴を開こうって言うよ」

「そ、そこまでしてくれなくても、いいんだけれど……」

戸惑いながらそう返したランスレットへ、いたずらのようにポルカは笑った。せっかくだから楽しんでいきなよ、と彼がつづけると、ランスレットは口をむにゃむにゃさせながらも頷いた。ポルカの案内のまま、白い壁の続く遺跡の奥へとあゆんでいく。じきに、他のフーフたちからの歓迎の声があがった。

◆◆◆

ポルカの言う通り、夜には宴がひらかれた。とはいえ、とうぜん、滅びゆくこの地では、贅沢な真似はできやしない。振舞われる木の実や酒はささやかなものだったが、それでもフーフたちはにぎやかに言葉をかわし、よろこんで笑っていた。